公共建築物を建てた際、その費用の1%を建物に関連するパブリックアートに割く「1%フォー・アート」は現在、欧米だけでなくアジアでは韓国や台湾でも採用されています。どのような経緯を辿って導入したのか、幾つかの国の事例を紹介します。

 

 

 

フランス

フランスでは「芸術のための1%(un pourcent artstique)」と呼ばれています。人民戦線内閣(1936年~1937年)時代に、ジャン・ゼイ文相が芸術家の支援と文化遺産の充実を目的に提唱したのが始まりといわれます。1951年、教育省がまず導入し、公立の学校と大学には建築に合った現代アートを設置することが義務付けられました。なお1959 年に文化省が設立され、アンドレ・マルロー文化相は国家予算の1%を文化政策に充てるという目標を掲げました。「芸術のための1%」は80年代までに外務省、国防相、経済・財政省など各省に導入され、現在ではすべての公共建築物に適用されています。

 

 

スウェーデン

スウェーデンで「1%フォー・アート」の歴史は古く、1937年にスウェーデン・パブリックアート庁が設立されてスタートしました。当時は大恐慌の影響がまだ色濃く残っており、公共空間を芸術的環境で整えるというよりも、芸術家に仕事を提供するという意味合いが強くありました。戦後の1947年からは、それまでプロジェクトごとに公共建築費の1%相当を芸術に充てていたのを、国が年間予算で手当することになりました。現在、「%フォー・アート」制度は、ストックホルム市をはじめとする多数の自治体で導入・運用されています。


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作品例:花の王幼稚園『A, B, see』(2016年/作者:BYGGスタジオ(Hanna Nilsson & Sofia Østerhus)/写真:Päivi Ernkvist, Hanna Nilsson/提供:ストックホルム市 芸術部)

 

 アメリカ

アメリカの「1%フォー・アート」は、大恐慌後のニューディール政策の下で、仕事のない芸術家に対する救援策として1935年に始まりました。第二次大戦勃発後の1943年、芸術家救済の必要性が薄れ、終了しますが、8年間に約6000人の芸術家が恩恵を被ったといいます。戦後、芸術館の救済ではなく文化政策として1959年に「1%フォー・アート」がスタートします。アメリカの特色は単に美術品にとどまらず、舞台芸術などのパーフォーマンスも「1%フォー・アート」に含まれることです。なお額は厳格に1%と決まっているわけではなく、0.5%もあるなど、このあたりは各州、自治体で柔軟になっています。

 

 

韓国

韓国では「1%フォー・アート」は「建造物の美術作品制度」と呼ばれており、ソウル五輪(1988年)などスポーツ・イベントがパブリッククアートの振興に大いに寄与しました。五輪準備段階の1984年、まずソウルで公共建築物への美術品設置が義務化されました。続いて1995年、「文化芸術振興基本法」が改正され、国や自治体における建築物への美術品の設置が、それまでの奨励から義務になりました。現在は、公共建築物だけでなく、法令が定める一定条件の建築物を建築する施工主は、建築費の一定比率に相当する金額を美術品に充てるか、または費用の0.7%相当額を「文化芸術振興基金」に拠出しなければなりません。2014年現在、これまでパブリックアートの設置件数は約1万4000件で、年間当たり600~1000件となっています。